横浜市立大学附属病院は、このたび厚生労働省の「がんゲノム医療拠点病院」に指定されました(指定期間:令和5年4月1日から4年間)。今回の拠点病院指定は、これまでのがんゲノム医療提供実績や体制が質の高いものであったと評価された結果と考えています。附属病院は、これまでの豊富な経験を活かし、今後も引き続き、がんゲノム医療*1を推進していきます。
1.がんゲノム医療拠点病院
がんゲノム医療では、検査結果を解釈するための会議*2が必要になります。この会議を自施設で開催できる施設は、「がんゲノム医療中核拠点病院」と「がんゲノム医療拠点病院」に分かれています。中核拠点病院は、がんゲノム医療の臨床・研究・人材育成までを行う施設であり、全国に13施設指定されています。一方、拠点病院は、中核拠点病院と同等の医療提供体制を有する施設で、全国に32施設指定されています。
「がんゲノム医療拠点病院」は、全国・地域毎に総数が定められています。関東甲信越ブロックでは12施設を定数として、2019年から2022年までのがんゲノム医療の診療実績などを基に、選定が行われました。
これまで附属病院は、「がんゲノム医療連携病院」として、「がんゲノム医療中核拠点病院」である東京大学医学部附属病院と連携して上記会議を実施していました。今回、「がんゲノム医療拠点病院」に指定されたことにより、今後は、自施設で行えるようになります。(表1)
(表1)今回指定されたがんゲノム医療拠点病院(関東甲信越ブロック)
加藤真吾医師コメント 横浜市立大学附属病院 がんゲノム診断科 担当部長
今回の指定は、当病院のがんゲノム医療提供体制が高い評価を受けた結果であり、とてもうれしく思っています。また、附属病院に対する指定ではありますが、大学医学部の施設・体制や市民総合医療センターとの連携も申請には重要であり、横浜市立大学全体として得た拠点病院の指定と思います。引き続き、近隣の医療機関、そして市民の皆様のお役に立てるよう、分かり易く丁寧ながんゲノム医療を提供させていただきます。
[用語の解説]
*1 がんゲノム医療:
がんゲノム医療は、がんの薬物療法における新しい治療法です。これまで、がんの薬物療法は、がんが発生した臓器を主な指標として、『病名』を決め、それに基づいて治療法を決めてきました。がんゲノム医療では、このような臓器別の分類ではなく、がん細胞の遺伝子変化に着目して治療法を模索します。このため、検査の結果から、新しい治療法が見つかる可能性があります。
がんゲノム医療では、まず、がん細胞の遺伝子変化を解析します。この際、とても多くの数の遺伝子を一度に検査します。この検査を、「がん遺伝子パネル検査」と呼んでいます(当院では、患者さんに分かり易いように、「がんゲノム検査」と呼んでいます)。がん遺伝子パネル検査は、例えば、『膵臓がんの人に肺がんの薬を使えないか、ということを確認する検査』というイメージの検査です。
*2 検査結果を解釈するための会議(エキスパートパネル):
がんゲノム検査は、多数の遺伝子情報を処理しなければならず、結果の解釈が非常に難しくなります。このため、最終的な検査結果を決定するためには、多職種の専門家を含む会議による議論が必要と定められています。この会議を『エキスパートパネル』と呼んでいます。