代表理事 挨拶

斉藤聡(山王病院・内科部長(消化器)、国際医療福祉大学・消化器内科(肝臓)教授)

 「法人に参加して医師としてのスキルアップを」

 初代代表理事・中島淳先生の後を継ぎ、代表理事を拝命いたしました斉藤聡です。前代表理事の強力なリーダーシップによって法人・横浜国際肝胆膵消化器病学機構が設立され、1年半が経過いたしました。この組織は大学病院の医局に依存せずに協力病院間の情報共有や、人事交流、人材確保のため新人勧誘などを社員の未来を応援することを目的に設立されました。しかしながら現実には法人設立後も横浜市立大学附属病院の医師が中心となって法人の運営を行ってきており、「これではやはり今までの大学中心の人事ではないか」と思われる方もいらしたと思います。また現職の大学教授が代表理事であったことから、この大学中心のイメージは払拭出来なかったと思います。今回自分自身が大学を離れた立場となり、そのうえで中島先生のあとに代表理事に指名いただいたのは、横浜市立大学の外から俯瞰的に捉えて、これからの法人の在り方を考え運営を推し進めるといったメッセージであると考えます。

 前代表理事は精力的に、新人の勧誘、各病院への医師の派遣と待遇向上の交渉、専門性向上のためのトレーニング、部長などの管理職擁立のための戦略的交渉、女性医師支援をはじめとする働き方改革の実践に取り組んできました。これが実を結びはじめ若い医師の多い法人にもかかわらず、病院長、副院長を輩出し、さらに部長職に就いている法人社員は15施設以上となっております。協力病院は大学附属の病院が複数になり、学生をリクルートする間口も広がっています。

 

 さらに新人の入門希望者は以前と異なり、大学でトレーニングを受けた方々より各協力病院でトレーニングを受けた若手が大半を占めるようになっております。このため消化器内科医として成長するために、これまでのようにまず大学の医局に入局し、そこから協力病院に派遣されるのではなく、法人社員となり自身のスキルを磨くために適切な協力施設でトレーニングする選択肢が可能となっています。勿論、臨床研究や基礎研究のノウハウを学ぶためには大学・附属病院は法人・横浜国際肝胆膵消化器病学機構における協力施設の中でも非常に重要な施設です。研究成果をあげ博士号を取得できれば、海外留学を希望する社員の方には留学のチャンスが広がります。現に当法人からは常に海外留学中の方がいます。法人内には横浜市立大学と国際医療福祉大学が協力施設であり、より多くの方に博士号を取得できるチャンスが広がると考えております。

 本法人では社員総会などの集まりで行われるシンポジウムではこれまでの医学的な講演会のみならず、社員の生活向上などを目的とした興味深い公演が行われています。2022年度には「写真や映像を撮る時、撮られる時のtips」をカメラの技術を学んだ社員が、他には「勤務医の資産防衛術~お金の残し方~」を資産のことについて造詣の深い社員が行っております。また当法人では早い時期から出産や育児を行う女性医師のサポートに重点をおいており、「わらサポ」といった組織を立ち上げております。出産を控えた女性医師の不安なことについて答えたり、出産後の育児について女子医師のみならず男性医師のかかわりや仕事と家庭の両立をサポートしたりすることを積極的に進めています。

 これからも社員の皆さんが医師として経験や学習を通して能力を習得したり向上させたりし(=スキルアップ)、優れた医師となる目標につき進めるように当法人は応援をすることを目指します。(2024年1月)

名誉理事長 挨拶

中島淳 (横浜市立大学医学部医学研究科肝胆膵消化器病学 主任教授)

 「主役は皆さんです」

 これが法人化の主たる目的です。われわれは20年間大学医局として新人の勧誘、各病院への医師の派遣と待遇向上の交渉、専門性向上のためのトレーニング、部長などの管理職擁立のための戦略的交渉、さらには女性医師支援をはじめとする働き方改革の実践に取り組んできました。当初は数人の組織でしたが現在は150名を超える大所帯となり、また関連する病院には大学付属病院が複数になり、また大学病院以上の規模や経営資源を有する病院も仲間になってまいりました。また新人の入門ルートも大学よりは各病院からの希望が増えてきて大学の役割が低下してきております、現在国内でも医局の法人化が規模が大きくなると行われるようになり、我々も公平な運営、透明性の高い組織、大学の垣根を超え社員の未来のためにのみ応援をする組織に生まれ変わる必要性に迫られておりましたがことようやく実現に至りました。

 これからの大きな目標は迫りくる医師過剰時代、大幅な医療費削減時代、待ったなしの働き方改革の到来に一人の医師として翻弄されるのではなく法人社員として来るべきその日に備えることをすることです。幸い消化器内科医には他科と異なる多くの患者ニーズ、どんどん開発される新しい医療技術というセールスポイントがあります。このイノベーションによる病院収入への貢献が先生方を守ることになるのです。これまでは医療技術の修練は大学の独占場でしたが昨今はむしろ特定の病院が大学のような雑務がない環境で大学以上の技術レベル、トレーニング実績を出してきておりますので、我々が目指すべきものは高い技術レベルを有する優秀な医師の育成であります。  

 今回の法人化では若手医師の高い医療技術の習得が大きな目標の一つです。高い技術を持った付加価値の高い消化器内科医の育成、この実行が我々の仲間が時代が変わっても高く評価される革新的目標であることはご理解いただけると思います。

 次の目標としては待遇の向上があります。この待遇は給料だけではありません、最近では勤務時間の短縮化が大きな課題です。家庭との両立のために勤務時間外を大切にできる環境整備も重要です。また女性医師が安心して働け、出産育児ができる環境整備をすることも重要になってきます。そのためにそれぞれの目的に合った勤務先病院の獲得も重要な使命です。また、ある年齢になればそれなりの役職を得られる仕組みも必要になります。先生方の多彩な希望にこたえることができるか、皆さんの多様な人生目標を応援することができるかどうかも重要な法人の役目であります。

 最後の目標はかけがえのない医師としての一生の仲間として人生を共に歩む仲間を作ることです。これは個人に負うところが大ですが病院をローテートして出会いを通して実現できるものと確信しております。より良い人間関係の構築には途方もない努力が必要です。結局医師も最後は人柄、人間関係です。ぜひ医師として技術を磨くとともに人間性を磨いてくれることを期待します。医師になった初めから恵まれた環境を得ることなどありえません、若い先生にはまずは汗を流すこと、仲間上司とうまく付き合うこと、患者と真摯に向かい合うことで未来が開けてくると思います。 

 今後は皆さんが主役です、既存の大学を中心とした大学医局の考えからできるだけ早く脱却して意識改革を進め未来に飛躍していただければと思います。先生方が飛躍するためにはやわらかい頭で「変わる」こと、「変われること」が重要です。法人の最大の使命は先生方への応援ですが、ぜひ自分の未来のために先生方自らも汗を流し、楽しく素晴らしい医師人生を歩んでくれることを願ってやみません。(2021年9月、初代理事長)