『腫瘍内科への道』

 平成22年卒の鈴木章浩です。私のキャリアパスということですが、この記事が若手の先生方に少しでも還元できれば幸いです。

 2010年3月に横浜市立大学を卒業し、2年間藤沢市民病院での初期研修を終え、肝胆膵消化器病学へ入局しました。2012年4月から2015年3月まで茅ヶ崎市立病院で後期研修をしており、内視鏡を始めとする消化器内科医として必要な技術を磨きつつ、積極的に化学療法症例を担当し、勉強していました。

茅ヶ崎市立病院は一般内科診療から消化器内科の専門症例まで幅広く経験を積むことができて、後期研修のトレーニングする病院としては非常によいと今でも思います。将来のサブスペシャリティを決める際、内視鏡治療にも魅力があり惹かれましたが、がん診療を分子生物学的に行いたいと強く考えました。というのも、化学療法をする際に同じがん種でもレスポンスが異なることに疑問を持っていたからです。その差は組織型によるところも大きいとは思いますが、ゲノムによるところも大きいことを知り、勉強したいと考えました。

 そんな中、当教室の中島教授から東京大学先端科学技術研究センター(以下、先端研)・ゲノムサイエンス分野の油谷教授をご紹介いただき、大学院を受験し合格して、国内留学をすることができました。

 油谷教授はゲノム解析やエピゲノム解析において、日本では第一人者の一人です。油谷研究室では次世代シーケンサーを複数有しており、また解析には欠かせないインフォマティシャンも優秀な方が多く、疑問点はすぐに解決することが可能で、研究活動をするにはうってつけの場所でした。

 私自身は、胃がんのゲノム解析の担当となり、研究していました。活動の内容としては、月曜午前に所属研究員が半年に1回程度、進捗状況をまとめ90分程度発表を行うprogress meetingと、木曜午前に週1回の進捗を発表するweekly meetingで週2回は濃密なディスカッションをしていました。このmeetingで叱咤激励を受け、自分自身も成長していったように思います。大学院3年目の中ころから成果をまとめ始め、Science Advances(現在、インパクトファクター14.136)に投稿しました。

先端研在学中にはacceptされませんでしたが、大学病院へ戻った大学院5年目になんとかacceptされ、6年前期で卒業することができました。2020年度大学院医学研究科最優秀論文賞のおまけまでついてきて、これまでやってきたことを誇りに思うこともできました。

 そして、20204月からは横浜市立大学附属病院臨床腫瘍科へ出向させていただき、がんゲノム診療と並行して、消化器癌を中心とした化学療法を勉強しています。後期研修の自分と大きく違う点は、分子生物学的に考えながら、診療を行えている点です。例えば、KRAS変異のない大腸癌で、EGFR阻害剤が効果を示さないときに、ちがう経路のRTK/RASが活性化しているのではないかと考えるなどすると、日々の診療が非常に楽しいです。    

 今後の目標は、今年度中にがん薬物療法専門医を取得し、さらに腫瘍内科医としての道を邁進していきたいと思っております。