米田正人教授・中島淳名誉教授が参画したMASLD患者における国別eGFRの違いと肝線維化の関連を解明した国際多施設共同研究が MedComm誌に掲載
米田正人教授・中島淳名誉教授が参画したMASLD患者における国別eGFRの違いと肝線維化との関連を明らかにした国際多施設共同研究が MedComm 誌に掲載されました。
Variations in Estimated Glomerular Filtration Rate Across Countries in Patients With Metabolic Dysfunction-Associated Steatotic Liver Disease and Their Association With Liver Fibrosis: A Multicenter Study
Jing Zhao, Ferenc E. Mózes, Xin-Yu Xu, Dong Ji, Huiqing Liang, … Masato Yoneda, Atsushi Nakajima, Giovanni Targher, Christopher D. Byrne, Jacob George, Michael Pavlides, Ming-Hua Zheng ほか
MedComm. 2025 Nov 24;6(12):e70503.
DOI: 10.1002/mco2.70503
[米田正人医師のコメント]
本研究は、世界的に増加する代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)において、腎機能指標である推算糸球体濾過量(eGFR)が国や民族背景によってどのように異なるか、またそれが肝線維化の進展とどのように関連するのかを明らかにすることを目的として実施された、多国間・多施設の共同研究です。アジア・欧州を中心とする34施設から3,308名の肝生検で確定診断されたMASLD患者を登録し、国別のeGFR値および線維化ステージを比較しました。その結果、以下の重要な知見が得られました:
• 欧州(平均92.2 mL/min/1.73m²)では、アジア(104.7 mL/min/1.73m²)に比べて有意に低いeGFRを示し、線維化重症度も高かった(61.4% vs 32.4%)。
• アジア集団では、eGFRは肝線維化と逆相関し(OR 0.793, p = 0.002)、腎リスク因子で調整後も同様の関連を認めた。
• 一方で、欧州集団では同様の関連性は認められなかった。
これらの結果は、MASLD患者における腎機能の解釈やCKDリスク評価が、国・民族背景によって大きく異なる可能性を示唆しており、国際的な診療指針や臨床研究デザインを考えるうえで非常に重要な知見です。
本研究は、国際的なビッグデータを基盤として、MASLDと腎障害の関連を国別に詳細に検証した初めての研究の一つであり、今後のMASLD診療における腎リスク評価の最適化に大きく貢献する成果と考えています。今回、MedComm(Wiley)に本成果を報告できたことを光栄に存じます。
