米田正人教授・中島淳名誉教授・今城健人部長が参画した国際Delphiコンセンサス研究がCGH誌に掲載
米田正人教授、中島淳名誉教授、今城健人部長が参画したMASLDにおける治療効果評価のサロゲートエンドポイントに関する国際Delphiコンセンサスが Clinical Gastroenterology and Hepatology 誌に掲載されました。
Expert Delphi consensus on surrogate endpoints for treatment assessment in metabolic dysfunction-associated steatohepatitis
Arun J Sanyal, Atsushi Nakajima, Elisabetta Bugianesi, Giada Sebastiani, Jörn M Schattenberg , Leon A Adams, Mazen Noureddin, Masato Yoneda, Pierre Bedossa, Zobair M Younossi, Assim A Alfadda, Andreas Geier, Frank Tacke, Giulio Marchesini, Giovanni Targher, Hussain Abdulrahman Al-Omar, Hannes Hagström, Juan G Abraldes, Jerome Boursier, Kento Imajo, Kwabena Opuni, Luis Calzadilla Bertot, Naim Alkhouri, Nobuharu Tamaki, Rohit Loomba, Riku Ota, Raluca Pais, Scott L Friedman, Saumya Jayakumar, Salvatore Petta, Vlad Ratziu, Vincent Wai-Sun Wong
(全23名の国際専門家パネル)
Clin Gastroenterol Hepatol. 2025 Dec 6:S1542-3565(25)01014-6.
DOI: 10.1016/j.cgh.2025.12.001
[米田正人医師のコメント]
本研究は、代謝機能障害関連脂肪性肝炎(MASH)における治療効果の評価指標(サロゲートエンドポイント)について、国際的な専門家の間で合意形成を図ることを目的として実施されました。治療薬開発の加速と、臨床での実装を見据え、規制当局・保険償還・日常診療のそれぞれにおいて“何を治療効果の指標として用いるべきか”という課題に対する指針を示すものです。
本研究では、北米・欧州・アジアの肝疾患専門家23名によるDelphi法を用いて、文献レビューに基づいた2ラウンドの構造化サーベイが行われました。評価の一致度は75%以上を「コンセンサス」、95%以上を「強いコンセンサス」と定義しています。その結果、規制・保険償還の観点では、現在のガイドラインに沿って
• 1段階以上の線維化改善(MASH悪化なし)
• MASH の組織学的消失(線維化悪化なし)
といった組織学的エンドポイントが依然として最も妥当とされました。一方、臨床診療においては非侵襲的検査(NITs)が強く支持され、とくに
• VCTE(FibroScan)あるいはMREによる肝硬度測定(LSM)の30%以上低下
が「臨床的に意義のある治療反応を示し、長期的な予後改善につながる可能性が高い」とのコンセンサスが得られました。また、日常診療では肝生検をNITsで代替することを支持する合意も示され、今後のガイドラインや診療プロトコルに大きな影響を与える内容となっています。
今回のDelphiコンセンサスは、MASH治療開発・診療指針づくりの重要な基盤となるものであり、特に日本からは中島名誉教授とともに参画できたことを大変光栄に存じます。今後も、非侵襲的検査を中心とした評価体系の確立に向けて、国際的な議論と研究を継続してまいります。
