一般社団法人横浜国際肝胆膵消化器病学機構Yokohama International Hepato-Biliary-Pancreatic-Gastroenterological Association

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2025年2月21日

がんゲノムグループ

はじめに

がんゲノムグループは、『がんゲノム診断科』という独立した診療科として、横浜市立大学附属病院で診療を行っています。がんゲノム診断科は、肝胆膵消化器病学から派生した診療科です。進行がんの患者様に『がん遺伝子パネル検査』という検査を提供しています。

※『がんゲノム検査』は『がん遺伝子パネル検査』が正式な呼び方ですが、患者さんに分かり難いので、ここではがんゲノム検査と記載します。

検査の目的

がんゲノム検査の目的は、自分のがんに効果があると考えられる薬剤を探すことです。

がんの診療では、まず病名を決定します。そして、その病名から治療法が決まります。この病名は、通常臓器別の分類となります。

がんゲノム検査では、病名ではなく、がんに起きている遺伝子変化を根拠として、治療できないかを調べます。このため、通常自分の病名(例:胃がん、膵がん)では使わない薬剤から検索を行うこととなります。

検査の費用、検査にかかる時間

がんゲノム検査の費用は、10割負担で計56万円です。通常の健康保険が使えますので、自己負担額は数万円以下となることが多いです。

検査の流れ

保険適応外の薬剤も含めて、効果が期待される薬剤が検索されます。

保険適応

 標準治療の無い特殊ながん(希少がん)の場合と、標準治療のあるがん種の場合で、保険検査が可能な時期が異なります。検査の種類は複数あります。

 尚、保険のがんゲノム検査は『一患者につき一回まで』と規定されています。この大切な一回分の権利を、どの時点で使うのかが重要となります。

検体の選択

がんゲノム検査には、検査を行う材料(検体)が必要となります。適切な検体を選択することが、信頼のできる検査結果を得るために重要となります。

過去の検体を用いた検査

過去に外科手術や組織生検を受けている場合は、原則、その検体を使用します。注意点としては、組織採取から経過している時間です。

一般的に、採取後に適切な処置が行われていれば、組織採取から3年間はがんゲノム検査が可能です。

血液の検体を用いた検査

血液を用いたがんゲノム検査が保険承認されています。このため、検査のための検体が無い場合でも。検査可能です。しかし、血液を用いた検査と組織を用いた検査では、それぞれ利点も制限もあります。両者を比較して慎重に方針を決めましょう。

検体選択の重要性

 がんゲノム検査に用いる検体は、患者さんの現在の病状をできるだけ正確に反映したものが望ましいです。一方で、理論上最適な検体が、現実的に採取できるとは限りません。このため、検査に用いる検体の選択は、総合的な観点から判断します。

がんゲノム検査の種類

がんゲノム検査に複数の種類があり、それぞれに特徴があります。どれを選んでも費用は同じです。

保険薬

がんゲノム検査の結果、通常の医療保険で使用可能な薬剤(保険薬)が検出されると、どの医療機関でも治療可能となります。

臨床試験

臨床試験へ参加するには、参加基準と除外基準を両方満たす必要があります。臨床試験へ参加を希望される場合は、実施施設を受診後、除外基準に該当するか検討が行われます。この結果次第では、臨床試験に参加できないこともあります。

遺伝に関わる情報

がんの治療に関係する情報の他に、この検査をきっかけとして、遺伝に関わる情報が得られることがあります。遺伝に関わる情報が得られた場合は、当院の遺伝子診療科で相談することが出来ます。通常、遺伝カウンセリングは自費診療となりますが、がんゲノム検査を受けた方は、初回外来のみ保険診療で受けることが出来ます。

遺伝カウンセリングも当院で可能です。

当院の体制

当院では、中央一括管理型のがんゲノム医療を採用しています。がんゲノム医療を専門に扱う診療科を配置しています。

がんゲノム外来の予約方法

横浜市立大学附属病院へ通院されている患者様

主治医の先生、あるいはがん相談支援センターにお問い合わせください。

他院へ通院中の患者様

横浜市立大学附属業インの代表電話(045-787-2800)へ電話をかけ、『がんゲノムの外来を予約したい』とお伝えください。
※他院でがんゲノム検査を受けていない場合は、保険診療で受診が可能です。

地域の先生方へ

当院がんゲノム診断科へ患者様をご紹介いただく場合は、患者様に紹介状をお渡しした状態で、患者様より当院へお電話いただけますと幸いです。
紹介状には、病理レポートのコピーの添付をお願い致します。
検体を紹介日に持参していただく必要はありません。
尚、組織検体が無い患者様でも、肝腫瘍生検やEUS-FNAによる検体採取も当院で対応可能です。
地域のがんゲノム医療の拠点となれますよう、今後とも尽力してまいります。
今後とも何卒宜しくお願いいたします。

横浜市立大学附属病院へのご寄付のお願い

横浜市立大学附属病院では「横浜市立大学基金」を開設しています。
皆さまからお寄せいただいた寄附は最新医療機器の購入や院内の整備、医療スタッフの育成、研究の推進等に活用させていただきます。
より一層のご協力を賜りますようお願い申し上げます。

お申し込み方法

お申込書をお求めの方は、お近くの当院職員へお声がけいただくか、下記担当までご連絡ください。本寄附制度、お申し込み方法についてご案内いたします。
【担当】総務課庶務担当 電話:045-787-2920

※振込取扱票の通信欄や、寄附申込書の自由記載欄に診療科・部門名を記載いただくことで寄付先の指定も可能です。

2025年2月21日

肝臓グループ

代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD(マッスルド))

2023年にNAFLD(ナッフルド)からMASLD(マッスルド)へ名前が変わりました.

生活習慣の乱れによる脂肪肝は, 従来「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD(ナッフルド))」と呼ばれていました. 2023年, 病態をより正確に表現し, 差別的表現を避けるため, 「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD(マッスルド))」へ名称が変更されました. 中等度に飲酒し, 代謝機能異常とアルコール関連肝障害の両方の特徴を有している人は「代謝機能障害アルコール関連肝疾患(MetALD(メットエーエルディー))」と分類されます. 

MASLD(マッスルド)、MetALD(メットエーエルディー)と診断されたら?

肝臓に脂肪が蓄積し, 過体重, 糖尿病, 高血圧, 脂質異常症などがある場合, 飲酒量に応じてMASLD(マッスルド)またはMetALD(メットエーエルディー)(メットエーエルディー)と診断されます. いずれの場合も, 血液検査(=肝線維化マーカー)や画像検査(エラストグラフィ),組織検査(肝生検)で肝臓の硬さを正確に評価することが重要です.

横浜市立大学は世界で初めて MASLD(当時のNAFLD)疾患で超音波エラストグラフィ(フィブロスキャンR)の有用性を確立した施設で,MRエラストグラフィも盛んに行われ,日本でも有数のMASLD診療・研究施設です. 

MASLD(マッスルド)と診断されたら治療はどうするの?

MASLDの治療には生活習慣の改善が重要であり,過体重の場合にはカロリー制限などの食事療法や,有酸素運動やレジスタンス運動を組み合わせ,体重を5 ~10%減少することを目標にします.糖尿病や高血圧,高脂血症の適切な管理もMASLD治療には不可欠です.

薬物療法はまだ日本では保険適応になっている薬はありませんが,横浜市立大学では世界で開発されている新薬の開発(治験)を積極的に行っております.

日本では肝硬変やその前段階と診断された場合は, 食道静脈瘤や肝細胞がんの検査が必要です. MASLDは心血管疾患のリスクを高めるなど全身の病気とも関連しています. 

また, 日本に限らず世界中で,肝細胞癌や肝硬変の原因としてMASLDの割合が増加しています.肝硬変やその前段階と診断された場合は,定期的な食道静脈瘤や肝細胞癌の検査が必要になります.その他,心筋梗塞や脳梗塞などのチェックも重要になります.

肝癌治療について

ラジオ波焼灼療法(RFA)/マイクロ波焼灼療法(MWA)

FAおよびMWAは、体表から特殊な針を肝腫瘍に刺し、腫瘍を焼灼することで根治を目指す低侵襲な治療法です。これらの治療法は身体への負担が少なく、鎮静剤と鎮痛剤を使用することで、ほぼ眠った状態で治療を受けていただけます。

当教室では、フリーハンド法や人工胸水法、人工腹水法など、さまざまな技術を駆使して、多岐にわたる病変の治療を行っています。特に、横隔膜直下、心臓直下、血管・消化管・胆嚢近傍など、一般的に治療が難しいとされる病変に対してもRFAを適用しており、良好な結果を得ています。

この治療法は肝細胞癌だけでなく、大腸癌などの、他の臓器から肝臓に転移した転移性肝癌に対しても有効です。腫瘍が大きい場合には、RFAより広範囲を焼灼できるMWAを用いることで、より効果的な治療が期待できます。

当院は県内でもトップクラスの症例数を誇っており、他院でRFAが難しいとされた患者さんにも治療を提供できる可能性があります。患者さん一人ひとりの状況に応じて最適な方法をご提案し、安全かつ効果的な治療を行ってまいります。

肝動脈化学塞栓療法(TACE)

TACEは、カテーテルを使用して肝臓の腫瘍に近い動脈から直接抗癌剤を投与し、その後、塞栓剤を注入することで腫瘍を栄養する血管を詰める治療法です。この手法により、抗癌剤を腫瘍に直接作用させると同時に、腫瘍への栄養供給を遮断することで治療効果を高めます。

さらに、当院ではTACE時に3D画像の再構築が可能なCT装置を使用しています。この3D画像を活用することで、腫瘍の位置や血管の構造を正確に把握でき、診断および治療の精度が大幅に向上します。

全身薬物療法

肝細胞癌の全身薬物療法では、免疫チェックポイント阻害薬や分子標的治療薬が使用されます。これらの薬剤は、点滴または内服薬として投与されます。

近年では、肝細胞癌治療の第一選択薬は免疫チェックポイント阻害薬になります。この薬剤は従来の抗癌剤とは異なり、免疫細胞を活性化させることでがん免疫を強化し、腫瘍の縮小を目指します。また、分子標的治療薬もがん細胞の増殖にかかわる特定の分子を狙って作用するため、高い治療効果が期待できます。

治療にあたっては、患者さん一人ひとりの病状や体調を十分に考慮し、最適な薬剤を選択しています。

近年では患者さんの状態やがんのステージにより、上記の治療法を組み合わせることがあります。最新のエビデンスを活用し、最適な医療を提供いたします。

急性肝炎・肝不全

急性の経過で肝障害や凝固障害、黄疸をきたすことがあります。原因として、ウィルス性(A~E型肝炎、Epstein-Barr virus、サイトメガロウィルス、ヘルペスウィルスなど)やアルコール性、自己免疫性、薬剤性など様々な原因が挙げられます。

各肝炎に関しては、慢性肝炎のところに記載しているため、参照してください。

(可能ならリンクを飛ばせるようにしてください。)

原因検索として血液検査だけでなく、必要に応じて経皮的肝生検や頚静脈的肝生検を実施しています。

*経頚静脈的肝生検(Transjugular liver biopsy)

通常の肝生検は、みぎ肋間より穿刺しますが、腹水や凝固障害を有する症例では施行できません。そのため、みぎ内頚静脈より穿刺し、肝組織を採取する方法です。

治療は、基本的には安静・補充療法を行います。当院は、神奈川県で唯一の生体肝移植を実施している病院であり、必要に応じて消化器外科とも連携を行っています。

慢性肝炎・肝硬変・慢性肝不全

検診で肝機能障害を指摘されていませんか? 第59回日本肝臓学会総会で行われた奈良宣言2023では、慢性肝臓病を防ぐために、ALT>30でかかりつけ医を受診するよう提案されています。

慢性肝炎とは、半年以上肝機能障害が続くことを指します。進行を防ぐために頑張ることのできる時間があるため、かかりつけ医との相談が大事になります。

慢性肝炎の原因

原因として、ウィルス性(A~E型肝炎、Epstein-Barr virus、サイトメガロウィルス、ヘルペスウィルスなど)やアルコール性、自己免疫性、薬剤性など様々な原因が挙げられます。

ウィルス性肝炎

下記に示すようにA型~E型肝炎が知られています。このうち、慢性肝炎となり得るのは、B型肝炎とC型肝炎の2つです。

自己免疫性の肝炎

自己免疫性の肝炎には、原発性胆汁性胆管炎(PBC, Primary biliary cholangitis,指定難病93)、原発性硬化性胆管炎(PSC, primary sclerosing cholangitis、指定難病94)、自己免疫性肝炎(AIH, Autuimmune Hepatitis, 指定難病95)が知られています。

この3つの病気は重複することもあります。いずれも指定難病とされており中等症以上の方は助成金を得ることができます。

下記に、それぞれの特徴を記載しました。

上記以外にも、MASLD(リンク飛ばせるようにしてください)やアルコール性肝炎、MetALD、ヘモクロマトーシス、Wilson病、バッドキアリ症候群などさまざまな病気があります。

肝硬変症

ながらく慢性肝炎を患うと、やがて肝硬変に至ります。肝硬変に至ると、低栄養(サルコペニア)や肝性脳症、黄疸、凝固能の低下、胸水貯留、食道・胃静脈瘤などの側副血行路の発達、肝腎症候群、肝肺症候群などさまざまな合併症を生じるようになります。肝硬変症の方で、肝性脳症や腹水貯留を認め、一定の概要を満たすChild-Pugh分類B以上の方およびChild-Pugh分類Cの方は、身体障害者手帳の交付対象となることもあります。また、65歳以下の方であれば、肝移植の適応となることもあり、かかりつけ医と相談してください。

2025年2月21日

胆膵グループ

胆膵グループ 診療のご案内

横浜市立大学 肝胆膵消化器病学教室 胆膵グループでは、胆膵領域の専門的な診療でお役立ちたいと日々尽力しております。健診や日々の通院で胆のう、胆管、膵臓に病気がみつかった場合、あるいは病気が疑われる場合など、お気軽にご相談いただければと思います。 大学病院ではありますが、救急診療も24時間受け付けております。胆管炎、黄疸、急性膵炎など、治療を急ぐ疾患も迅速に対応できるよう準備しております。また明らかに胆膵疾患が疑われるわけではありませんが、腫瘍マーカーだけが高値の場合や、健診の超音波にて腹腔内腫瘍が指摘された場合など、腫瘍の発見や診断につきましても当グループが積極的に行っております。是非、ご相談ください。

当グループにご相談いただいた診断・所見など

胆のう

胆のう結石、胆のうポリープ、胆のう腫瘍(疑い)、胆のう壁肥厚、胆のう炎 など

胆管

胆管拡張、総胆管結石、胆管腫瘍(疑い)、胆管炎、乳頭部腫瘍(疑い) など - γ-GTP高値、ビリルビン高値 など

膵臓

膵管拡張、膵のう胞、膵腫瘍(疑い)、膵の石灰化、膵石 など - アミラーゼ高値 など

その他

腫瘍マーカー高値、脾腫瘍、腹腔内腫瘍 など

当科の特色

一般的な胆膵疾患のほか、神経内分泌腫瘍や自己免疫性膵炎といった希少疾患も専門施設として診療を行っています。

また超音波内視鏡や新型のDual Energy CT、MRIを中心とした胆膵疾患の早期診断や他院での治療が困難な胆管結石・膵石の内視鏡治療や、超音波内視鏡ドレナージ、消化管術後症例の小腸鏡を使用したドレナージなど積極的に受け入れてお診療を行っております。

2025年2月21日

消化管グループ

消化管グループのご紹介

消化管グループでは、経験豊富な専門医・指導医が中心となり、患者さま一人ひとりに適した診療と治療を行っています。最新の医療技術を駆使し、安全で質の高い診療を提供することを目指しています。

対応する疾患と治療

私たちは、食道・胃・小腸・大腸など、食べ物が通る道(消化管)に生じるさまざまな病気を診断・治療しています。以下に代表的な疾患を記載いたします。

消化管腫瘍(がん・ポリープ)

最新の内視鏡を用い、小さなポリープから早期のがんまで幅広く治療しています。内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は、体への負担が少なく、早期退院が可能な治療法です。通常では実施困難と判断された例に対しても、様々な工夫を行って、積極的な内視鏡切除を実施しています。

進行がんの場合も、外科や化学療法部門と緊密に連携し、迅速に適切な治療へ移行できる体制を整えています。

食道がんに対する光線力学療法(PDT)

当院は、横浜市および三浦・横須賀地区でPDTを行える唯一の施設であり、神奈川県内でも数少ないPDT実施施設です。PDTは、光に反応する薬剤と特殊なレーザーを用いた治療法で、通常の手術や放射線治療が困難な患者さまにも適応できる可能性があります。食道がんの治療に新たな選択肢を提供し、患者さまの負担を軽減することを目指しています。

炎症性腸疾患(IBD)

潰瘍性大腸炎やクローン病など、若い世代を中心に増加している難病についても、最新の医療技術を活用し、薬物治療や内視鏡検査を組み合わせて診療しています。患者さまのライフスタイルに寄り添いながら、症状のコントロールを目指します。

小腸の病気

小腸の病気の診断には、カプセル内視鏡やバルーン内視鏡を用いて、負担の少ない検査を提供しています。必要に応じて内視鏡的治療も可能です。

救急疾患(消化管出血・腸閉塞など)

胃や大腸の出血、腸閉塞などの緊急性の高い疾患にも、24時間対応できる体制を整えています。迅速な診断と治療で、患者さまの安全を第一に考えています。

当院の特色

  • 高度な内視鏡診療の実施:最新の内視鏡機器を駆使し、精度の高い診断と治療を提供。
  • 食道がんに対するPDT実施施設:横浜市・三浦横須賀地区で唯一のPDT実施施設。
  • 多職種連携による包括的な診療:外科・放射線科・腫瘍内科と連携し、最適な治療方針を決定。
  • 患者さまに寄り添う診療:「治療は難しいと言われたが、他に方法はないか」とお悩みの方も、ぜひご相談ください。

ご相談について

「こんな症状は相談していいのかな?」と迷われる場合でも、どうぞお気軽にお問い合わせください。また他院で提示された治療法に疑問があった場合や、当院での判断を問い合わせたい場合もお気軽いご連絡ください。
患者さまの不安を取り除き、安心して治療を受けられる環境を整えてお待ちしております。

2025年2月19日

患者さんへ

診療グループ紹介

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