一般社団法人横浜国際肝胆膵消化器病学機構Yokohama International Hepato-Biliary-Pancreatic-Gastroenterological Association

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2025年3月3日

臨床と研究

臨床と研究グループ紹介

2025年2月17日

がんゲノムグループ

はじめに

検査の概要に関しましては、患者さんへの項目をご参照ください。
ここではこれまでの検査結果をまとめます。

アウトカム

治療到達率はがんゲノム医療の指標の一つですが、当院では平均的な10%前後です。概ね、1/4程度の患者さんが、初回の結果説明時に『薬剤あり』と判定されます。その後、実際に薬剤を使用する患者さんは、全体の約10%です。

検査数の推移

2023年度より、検査数が多くなってきました。保険適応薬の増加が原因の一つだと思います。

臓器別検査数

臓器別の検査数です。胆膵領域がんが多くなっています。

紹介方法

横浜市立大学附属病院へ通院されている患者様

主治医の先生、あるいはがん相談支援センターにお問い合わせください。

他院へ通院中の患者様

横浜市立大学附属業インの代表電話(045-787-2800)へ電話をかけ、『がんゲノムの外来を予約したい』とお伝えください。
※他院でがんゲノム検査を受けていない場合は、保険診療で受診が可能です。

地域の先生方へ

当院がんゲノム診断科へ患者様をご紹介いただく場合は、患者様に紹介状をお渡しした状態で、患者様より当院へお電話いただけますと幸いです。
紹介状には、病理レポートのコピーの添付をお願い致します。
検体を紹介日に持参していただく必要はありません。
尚、組織検体が無い患者様でも、肝腫瘍生検やEUS-FNAによる検体採取も当院で対応可能です。
地域のがんゲノム医療の拠点となれますよう、今後とも尽力してまいります。
今後とも何卒宜しくお願いいたします。

2025年2月17日

基礎研究グループ

はじめに

 がんゲノムグループは、『がんゲノム診断科』という独立した診療科として、横浜市立大学附属病院で診療を行っています。がんゲノム診断科は、肝胆膵消化器病学から派生した診療科です。進行がんの患者様に『がん遺伝子パネル検査』という検査を提供しています。
研究に関しては、がんの動物モデルを用いた創薬開発を目指しています。

がん患者モデルの開発

 がんの動物モデルというと昔からあるテーマで、新しい感じがしないと思います。しかし、私が開発しているモデルは、より実用的で、かつ、腫瘍免疫の解析が可能であるという点が特徴です。局所免疫に興味を持っていますので、同所移植に拘っています。

関連論文は以下の通りです。

Organoid-based ex vivo reconstitution of Kras-driven pancreatic ductal carcinogenesis.

Matsuura T, Maru Y, Izumiya M, Hoshi D, Kato S, Ochiai M, Hori M, Yamamoto S, Tatsuno K, Imai T, Aburatani H, Nakajima A, Hippo Y. (5/13) Carcinogenesis 2020 41(4) 490-501.

⇒膵癌モデルのプロトタイプ。ゲノム編集は使わず、siRNAを用いた。


Precision modeling of gall bladder cancer patients in mice based on orthotopic implantation of organoid-derived tumor buds.

Kato S, Fushimi K, Yabuki Y, Maru Y, Hasegawa S, Matsuura T, Kurotaki D, Suzuki A, Kobayashi N, Yoneda M, Higurashi T, Enaka M, Tamura T, Hippo Y, Nakajima A. (1/15) Oncogenesis 2021 10(4). 

⇒胆嚢癌モデルの論文。ゲノム編集技術を用いた。2021年に同誌から引用された論文のtop10に入った。


Identification of TPI1 As a potential therapeutic target in pancreatic cancer with dependency of TP53 mutation using multi-omics analysis

Toyoda T, Miura N, Kato S, Masuda T, Ohashi R, Matsushita A, Matsuda F, Ohtsuki S, Katakura A, Honda K. Cancer Sci. 2024 Sep 11. doi: 10.1111/cas.16302. Online ahead of print.

⇒膵癌モデルとマルチオミクス解析を用いた創薬ターゲットの創出の論文。創薬論文の一報目。

新規がん検査法の開発

 理学部の先生との共同研究で、がんの新しい検査法を開発しています。『がん薬物療法感受性予測因子としての高感度相同組換え修復異常検査の開発』というテーマで、横浜市立大学の戦略的研究推進事業に採択していただいています。

 このテーマは、産学連携で本気で新しい検査法を世に出そうと日々頑張っています。他学部の先生と研究するのは楽しいです。

その他

 その他、基本的にがんに関係することで、色々と関わっています。面白そうなものには積極的に首を突っ込んでいます。

研究について

 大学院の指導も含めて、私は基本的に来るもの拒まず、去るもの追わずです。他科の先生であっても、学生さんであっても、研究してみたいという方は、どうぞどうぞ、というスタンスです。

 私が行う研究は基礎研究です。医師の方が大学院時代に行う研究としてはとてもハードルが高いと思います。一方で、せっかく高い学費を払うのだから、臨床以外の世界を見てみるのも経験として悪くはないのではと思います。もし興味があれば、お気軽にお問い合わせください。

2025年2月17日

肝臓グループ

NAFLDからMASLDへの名称変更

 1970年代までは,一般的にアルコールを摂取していない場合,脂肪肝は肝硬変まで進展しないとの考えが広く受け入れられていました1). 1980年Mayo ClinicのLudwigらが,非飲酒者で脂肪肝炎として線維化が進展している20例を報告し「非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic hepatitis: NASH)」の疾患概念を提唱しました2. 1986年にSchaffnerらが,病態進展にアルコールが関与しない脂肪肝を総称として「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」とする概念を提唱しました3. NAFLDの概念の確立によって,食生活の変化や運動量の低下などの生活習慣が肝硬変や肝細胞癌のリスクとなることが明確となりました.

 しかし,NASHおよびNAFLDという病名には未解決の課題が議論されてきました.まずNAFLD病態の中核を成す代謝機能異常を「非アルコール」という表現では定義できない点です.次にNAFLDの定義が,他の肝疾患の否定を必須とするため,ウイルス性肝炎合併症例やウイルス性肝炎治療後の脂肪肝に,NAFLDの病名をつけることが困難でした.さらに「非アルコール性」を定義する飲酒量については,中等量の飲酒者(男性エタノール換算30~60g/日,女性20~50g/日相当)の場合にはNAFLDともアルコール関連肝障害とも診断をつけられませんでした.すなわち, NAFLDの疾患概念では分類や診断が困難な症例が増えてきた現状があります.また近年,alcoholicが「アルコール依存」を,fattyが肥満体型を揶揄するスティグマに相当するという概念から,欧州肝臓学会(EASL),米国肝臓学会(AASLD),中南米肝臓学会(ALEH)が主導し,NAFLDの名称と定義の是正が検討されました3).脂肪性肝疾患を包括してSteatotic liver disease (SLD)とし,心代謝性危険因子の有無,アルコール飲酒を含む脂肪性肝疾患を起こしうる成因に応じて系統だって分類されることとなりました(図1)4)

  1. Hilden M, Juhl E, Thomsen AC, et al. Fatty liver persisting for up to 33 years. A follow-up of the inversen-roholm liver biopsy material. Acta Med Scand 1973;194:485-489.
  2. Ludwig J, Viggiano TR, McGill DB, et al. Nonalcoholic steatohepatitis: Mayo Clinic experiences with a hitherto unnamed disease. Mayo Clin Proc 1980;55:434-438.
  3. Schaffner F, Thaler H. Nonalcoholic fatty liver disease. Prog Liver Dis. 1986;8:283-98.
  4. Rinella ME, Lazarus JV, Ratziu V, et al. A multisociety Delphi consensus statement on new fatty liver disease nomenclature. J Hepatol . 2023;79(6):1542-1556.

MASLD診断

MASLD診療において,臨床現場では肝生検を施行すべき症例の選定,施行するタイミングの検討が必要です.近年,肝生検に代わる非侵襲的な診断方法(NIT: noninvasive test)として,エラストグラフィによる肝硬度測定が活用されています.Vibration-controlled transient elastography(VCTE: フィブロスキャンR)は代表的な超音波エラストグラフィですが,その非侵襲性からMASHを対象とする薬物開発にも利用されており,縦断研究でも肝疾患関連イベントの発症予想への有用性が報告されています.2024年に発表された欧州肝臓学会(EASL),欧州糖尿病学会(EASD),欧州肥満学会(EASO)共同の代謝機能障害関連脂肪性肝疾患MASLD診療ガイドラインでは(図2左), 特に2型糖尿病,肥満に加え1つ以上の心代謝リスク因子の存在,肝逸脱酵素が持続的に高値症例に対しては,FIB-4 indexとフィブロスキャン(もしくはMRエラストグラフィ,Shear wave elastography, ELFスコアなどの代用検査)を段階的に組み合わることが推奨されています5).また2023年に米国肝臓学会(AASLD)から発表されたプラクティスガイダンスでは,プライマリケア医の視点から,線維化が進展したMASLD症例をどのように絞り込み,消化器/肝臓専門医に紹介するかの具体的なアルゴリズムが提唱されました(図2右)6) .「肝臓専門医へ紹介」に該当する患者様がいらっしゃいましたら, ご紹介いただけましたら幸いです.

  1. EASL-EASD-EASO Clinical Practice Guidelines on the management of metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease (MASLD). J Hepatol. 2024 Sep;81(3):492-542. 
  2. Rinella ME, Neuschwander-Tetri BA, Siddiqui MS, et al. AASLD Practice Guidance on the clinical assessment and management of nonalcoholic fatty liver disease. Hepatology. 2023;77(5):1797-1835. 
図2

MASLD治療

 MASLD発症,病態進展には多くの代謝経路が関与しており,治療としては,体重減少(7~10%の減少)が最も有効な戦略として推奨されています.欧州肝臓学会(EASL),欧州糖尿病学会(EASD),欧州肥満学会(EASO)共同の代謝機能障害関連脂肪性肝疾患MASLD診療ガイドラインでは,食事療法として地中海食が推奨され,砂糖や飽和脂肪を多く含む超加工食品の摂取制限,砂糖入り飲料を避けることが推奨されています. 運動療法は,中強度の運動は150分/週以上,または強度の運動は75分/週以上行うことが推奨されています7).薬物療法は,合併する代謝機能異常に応じて調整されるとされ,糖尿病を合併している場合にはGLP-1受容体作動薬,GLP-1/GIP(チルゼパチド),SGLT2阻害薬,メトホルミン(糸球体濾過率が30 ml/分/1.73m2以上),非代償性肝硬変の場合インスリン治療が推奨されています.脂質異常症を合併している場合にはスタチンが推奨されています7).AASLDのガイドラインではMASLDが代謝性疾患や心血管疾患,腎疾患など多岐にわたる合併症を有する可能性があるため,多分野領域や多職種との連携(Multidisciplinary approach)が強調されています8). 現在世界中でMASH新規治療薬の開発競争が行われています(図3).

図3
  1. EASL-EASD-EASO Clinical Practice Guidelines on the management of metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease (MASLD). J Hepatol. 2024 Sep;81(3):492-542. 
  2. Rinella ME, Neuschwander-Tetri BA, Siddiqui MS, et al. AASLD Practice Guidance on the clinical assessment and management of nonalcoholic fatty liver disease. Hepatology. 2023;77(5):1797-1835. 

肝臓癌治療について

医療関係者の皆様へ

当教室では、肝細胞癌および転移性肝癌に対して、最新の技術と豊富な経験を活かした治療を提供しています。患者さんの状態に応じた最適な治療法をご提案し、他院で治療が困難とされた症例にも積極的に取り組んでいます。

ラジオ波焼灼療法(RFA)/マイクロ波焼灼療法(MWA)

RFAおよびMWAは、体表から特殊な針を肝腫瘍に刺し、腫瘍を焼灼することで根治を目指す治療法です。身体への負担が少なく、鎮静剤と鎮痛剤を使用することで、ほぼ眠った状態で治療を受けることが可能です。

当院では、フリーハンド法や人工胸水法、人工腹水法などの高度な技術を駆使し、横隔膜直下、心臓直下、血管・消化管・胆嚢近傍といった一般的に治療が難しい病変にもRFAを行っています。また、肝細胞癌だけでなく、大腸癌肝転移などの転移性肝癌にも対応しています。腫瘍が大きい場合には、RFAより広範囲を焼灼できるMWAを用いることで、より効果的な治療が期待できます。

当院のRFAおよびMWAの症例数は県内でもトップクラスを誇っており、他院で治療が困難とされた患者さんにも対応できる可能性があります。

肝動脈化学塞栓療法(TACE)

肝動脈化学塞栓療法(TACE)は、カテーテルを使用して肝動脈から抗癌剤を直接投与し、その後、塞栓剤を注入することで腫瘍の栄養血管を詰める治療法です。この手法により、抗癌剤を腫瘍に直接作用させると同時に、腫瘍への栄養供給を遮断して治療効果を高めます。

当院では、TACE時に3D画像の再構築が可能なCT装置を使用しています。3D画像を活用することで、腫瘍の位置や血管の構造を正確に把握し、診断および治療の精度を大幅に向上させています。難易度の高い症例にも対応可能です。

全身薬物療法

全身薬物療法では、免疫チェックポイント阻害薬や分子標的治療薬を用いて治療を行っています。

近年では、免疫チェックポイント阻害薬が肝がん治療の第一選択薬となっております。また、患者さんの状態によっては、分子標的治療薬を選択することもあります。患者さんの状態に応じて最適な治療薬を選択いたします。

近年、患者さんの状態やがんのステージに応じて、RFA/MWA、TACE、全身薬物療法を組み合わせた集学的治療が増えています。当院では、最新のエビデンスに基づき、患者さん一人ひとりに最適な治療計画をご提案しています。

また、他院で治療が難しいと判断された症例にも積極的に対応しています。患者さんをご紹介いただければ、安心して治療をお任せいただけるよう尽力いたします。

急性肝炎・肝不全

急性の経過で肝障害や凝固障害、黄疸をきたすことがあります。原因として、ウィルス性(A~E型肝炎、Epstein-Barr virus、サイトメガロウィルス、ヘルペスウィルスなど)やアルコール性、自己免疫性、薬剤性など様々な原因が挙げられます。
各肝炎に関しては、慢性肝炎のところに記載しているため、参照してください。
(可能ならリンクを飛ばせるようにしてください。)
原因検索として血液検査だけでなく、必要に応じて経皮的肝生検や頚静脈的肝生検を実施しています。
*経頚静脈的肝生検(Transjugular liver biopsy)
通常の肝生検は、みぎ肋間より穿刺しますが、腹水や凝固障害を有する症例では施行できません。そのため、みぎ内頚静脈より穿刺し、肝組織を採取する方法です。

治療は、基本的には安静・補充療法を行います。当院は、神奈川県で唯一の生体肝移植を実施している病院であり、必要に応じて消化器外科とも連携を行っています。

慢性肝炎・肝硬変・慢性肝不全

検診で肝機能障害を指摘されていませんか? 第59回日本肝臓学会総会で行われた奈良宣言2023では、慢性肝臓病を防ぐために、ALT>30でかかりつけ医を受診するよう提案されています。

慢性肝炎とは、半年以上肝機能障害が続くことを指します。進行を防ぐために頑張ることのできる時間があるため、かかりつけ医との相談が大事になります。

慢性肝炎の原因

原因として、ウィルス性(A~E型肝炎、Epstein-Barr virus、サイトメガロウィルス、ヘルペスウィルスなど)やアルコール性、自己免疫性、薬剤性など様々な原因が挙げられます。

ウィルス性肝炎

下記に示すようにA型~E型肝炎が知られています。このうち、慢性肝炎となり得るのは、B型肝炎とC型肝炎の2つです。

自己免疫性の肝炎

自己免疫性の肝炎には、原発性胆汁性胆管炎(PBC, Primary biliary cholangitis,指定難病93)、原発性硬化性胆管炎(PSC, primary sclerosing cholangitis、指定難病94)、自己免疫性肝炎(AIH, Autuimmune Hepatitis, 指定難病95)が知られています。
この3つの病気は重複することもあります。いずれも指定難病とされており中等症以上の方は助成金を得ることができます。
下記に、それぞれの特徴を記載しました。

上記以外にも、MASLDやアルコール性肝炎、MetALD、ヘモクロマトーシス、Wilson病、バッドキアリ症候群などさまざまな病気があります。

肝硬変症

ながらく慢性肝炎を患うと、やがて肝硬変に至ります。肝硬変に至ると、低栄養(サルコペニア)や肝性脳症、黄疸、凝固能の低下、胸水貯留、食道・胃静脈瘤などの側副血行路の発達、肝腎症候群、肝肺症候群などさまざまな合併症を生じるようになります。肝硬変症の方で、肝性脳症や腹水貯留を認め、一定の概要を満たすChild-Pugh分類B以上の方およびChild-Pugh分類Cの方は、身体障害者手帳の交付対象となることもあります。また、65歳以下の方であれば、肝移植の適応となることもあり、かかりつけ医と相談してください。

研究について

肝臓グループでは、日本国内のみならず、世界各国の研究機関と連携し、多施設共同研究を実施することで、グローバルな研究活動を推進しています。主に代謝機能障害関連脂肪性肝疾患 (MASLD)や肝臓癌を対象とし、有効な治療法や有益な検査方法の新規開発に取り組んでおります.また、肝疾患の評価のために、MRエラストグラフィや超音波エラストグラフィを用いた先進的な診断技術の開発に加え,企業と共同研究で新規バイオマーカーの開発を進めております.さらに、経頸静脈的肝生検や腹腔-静脈シャントなど、特殊手技の有効性を検証する研究も実施しております。

横浜市立大学肝胆膵消化器病学におけるNAFLD(MASLD)研究の歴史

2024

MASLD日本語名制定メンバー

アジア太平洋肝臓学会(APASL)のガイドライン作成委員

グローバルで2型糖尿病合併NAFLDの予後を解明.Lancet GH誌.

グローバル:チルゼパチドの治療効果(第2相臨床試験)
NEJM誌

グローバル:MASLDの予後推測にAgileスコアの有用性.JAMA誌.

2022/2023

ヨーロッパ最大LITMUS参加

グローバルで非侵襲的診断方法と予後の解明.Lancet GH誌.

グローバルで2型糖尿病合併NAFLDの予後を解明.Lancet GH誌.

2020

診療ガイドライン作成委員(消化器病学会・肝臓学会)

ルビプロストンを用いた新規 治療薬を開発.Lancet GH誌

2019

アジア共同研究グループ創設. Gut and Obesity in Asis (GO Asia)

2016

NAFLD診断にMRエラスグラフィの有用性を確立.Gastroenterology誌.

米国初:NAFLD診断に超音波エラスグラフィ(2D-SWE)有用性を報告.
CGH誌

2014

日本消化器病学会診療ガイドラインの作成員

2012

肥満,脂肪肝炎発症のメカニズムを解明. Cell Metabolism誌.

2010

国内共同研究グループJSG-NAFLD設立

世界初:NAFLD診断に超音波エラスグラフィ(ARFI)有用性を報告.Radiology誌.

日本初:NAFLDの発症にPNPLA3遺伝子が関与している.BMC Med Genet誌.

2007

世界初:NAFLD診断に 超音波エラスグラフィ(FibroScanR)の有用性 を報告.Gut誌

2003

日本初の「脂肪肝」 専門外来を開設

  • 250本を超える英文論文業績
  • 日本をはじめアジアの国際的ガイドラインの作成委員
  • MASLDの国際的病名決定の際に日本代表
  • MASLDの日本語名決定委員
  • 新薬開発のグローバル試験を多数施行中
  • 「イヤーノート」「病気が見える」など正書を監修

特定臨床研究

  • 水溶性食物繊維の非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease: NAFLD)患者の肝臓脂肪化,肝機能への影響に対する予備調査の用量設定単施設介入研究(pilot study)
  • 非アルコール性脂肪性肝疾患患者のadvanced fibrosis診断における、超音波エラストグラフィ短期2回施行の有用性の検討
  • 潜在性肝性脳症患者に対するLinaclotide投与によるTrail-Making Test-A改善効果single-arm phaseⅡ”
  • 脂質異常症を合併するNASHに対するコレスチミド/エロビキシバット併用における有効性と安全性をコレスチミド/プラセボ併用と比較する多施設共同二重盲検無作為化比較試験(NECST試験)
  • NAFLD/NASH合併2型糖尿病患者に対するルセオグリフロジンのシタグリプチンを対照とした長期比較試験-多施設共同、無作為化、オープン試験-
  • 慢性便秘症状の改善に対するBifidobacterium bifidum G9-1の作用機序の検討
  • 高TG血症合併NAFLDに対するペマフィブラート、フェノフィブラートの無作為化比較試験-多施設共同、オープン試験-

人を対象とする生命科学・医学系研究

  • 大腸憩室症患者および非憩室症者の背景データと腸内環境の関連性を調査する前向きサンプリング、多施設共同研究
  • 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)患者のコレステロール摂取量についての調査研究
  • 非アルコール性脂肪性肝疾患の病態把握におけるアミノ酸測定意義に関する横断的研究
  • 非アルコール性脂肪性肝疾患患者における予後,肝線維化リスクに関する多施設共同後ろ向き観察研究
  • 非アルコール脂肪性肝疾患を対象とした肝画像データのAI応用に関する観察研究
  • 肝硬度測定を施行された脂肪肝患者の予後に関するレジストリ研究 (AVENGERS)
  • Fontan関連肝疾患における、予後と肝線維化リスクに関する後ろ向き観察研究
  • メタボリック症候群とそのリスク遺伝子多型が脂肪性肝疾患の病態に及ぼす影響
  • Metabolic dysfunction associated steatotic liver disease(MASLD)の診断と予後に関する観察研究
  • 日本人脂肪肝患者の飲酒量が健康に与える影響:多施設共同コホート研究 (Look Up to the Sky High, LUSH Study)
  • 便秘患者の臨床データと腸内環境の関連性を調査する前向きサンプリング、多施設共同研究
  • 非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease)における心疾患スクリーニングにおけるMRIの有用性を検証する前向き多施設共同研究
  • NASH-Scopeの性能を検討する試験
  • 肝線維化診断に関して、ELFスコアおよびコラーゲンネオエピトープと各種血液肝線維化マーカー、超音波エラストグラフィ、MRエラストグラフィとの比較検討
  • 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)患者の肝臓シグナルプロファイリングと血液マーカー探索
  • Global Longitudinal Assessment of Nonalcoholic Fatty Liver Disease(NAFLD)using Magnetic Resonance Elastography GOLD-MINE study.磁気共鳴エンストグラフィを用いた非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)のグローバル縦断研究
  • 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)におけるcytokeratin-18flagment(CK18f)のバイオマーカーとしての有用性の検討
  • リピドグライコームによるNAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)先制医療の開発
  • 日本におけるNAFLDに関して、超音波エラストグラフィ(フィブロスキャン)とFib4 indexを用いた、有病率と線維化ステージ分布に関する多施設共同前向き観察研究
  • 2型糖尿病合併非アルコール性脂肪性肝疾患患者の病態に対する新型コロナウイルス(COVID-19)による生活習慣の変化の影響についての検討
  • 肝生検を施行された脂肪肝患者の肝線維化評価におけるELFスコアの有効性に関する多施設共同研究
  • NAFLD疾患における肝細胞癌発癌予測における血中AIMの有用性の評価:単施設後ろ向き観察研究
  • 肝胆膵疾患を対象としたヒト iPS細胞を用いた病態解明に関する研究
  • アルコール性肝障害/依存症を有する患者に対するナルメフェンの飲酒量低減治療後の肝機能の推移
  • 病理学的に診断された非アルコール性脂肪性肝疾患を背景とした肝細胞癌治療効果に関する検討
  • RFA(radiofrequency ablation)実施予定肝細胞癌に対するLenvatinib投与後併用療法とRFA単独療法の無作為比較試験:多施設共同前向き研究
  • Acute-on-chronic liver failure(ACLF)の患者の残余検体の二次利用
  • Prognostication of nonalcoholic fatty liver disease and chronic hepatitis B with controlled attenuation parameter and liver stiffness measurement by Fibroscan – A prospective cohort study. フィブロスキャン(FibroScan)によるCAPおよび肝弾性度測定を通じた非アルコール性脂肪性肝疾患およびB型慢性肝炎の予後予測 – 前向きコホート研究.
  • NAFLDの肝細胞癌における腫瘍マーカーおよび血清マーカーの有用性:多施設共同症例対象研究および前向きコホート研究
  • 多施設臨床研究
    「肝臓の脂肪量の超音波による正確な測定法の確立の検討」 ATI(Attenuation Imaging)を用いた肝脂肪化の診断
    -MRIを用いたPDFF(proton density fat fraction)、肝組織、CAP(controlled attenuation parameter)との比較-“
  • 慢性肝疾患に対する超音波エラストグラフィFibroScan®のnew computation method SmartExamによる肝脂肪化・線維化の診断能の検討
  • 経頚静脈的肝生検の有効性、安全性を検討する観察研究
  • 腹腔-静脈シャントの有効性、安全性を検討する観察研究
  • Collection of Blood and Liver Biopsy Samples for Liver Fibrosis Study
  • Evaluation of locally developed machine learning algorithm in assessing liver steatosis and liver fibrosis in Singapore
  • 肝細胞癌の診断と予後に関する観察研究
2025年2月17日

胆膵グループ

横浜市立大学 肝胆膵消化器病学教室 胆膵グループでは、胆膵領域の専門的な診療・治療を行っております。

健診や日々の診療で胆膵疾患が疑われる場合など、お気軽にご相談いただければと思います。 大学病院ではありますが、救急診療も24時間受け付けております。胆管炎、黄疸、急性膵炎など、治療を急ぐ疾患も迅速に対応できるよう準備しております。 超音波内視鏡や新型のDual Energy CT、MRIを中心とした胆膵疾患の早期診断、超音波内視鏡ドレナージ、消化管術後症例の小腸鏡を使用したドレナージなど積極的に受け入れてお診療を行っております。また明らかに胆膵疾患が疑われるわけではありませんが、腫瘍マーカーだけが高値の場合や、健診の超音波にて腹腔内腫瘍が指摘された場合など、腫瘍の発見や診断につきましても当グループが積極的に行っております。是非、ご相談ください。

当グループの診療体制

紹介状をお持ちの上、平日初診受付時間内(午前8時30分~午前10時30分)に、外来にお越しください。時間内に間に合わない場合などは、事前にご一報いただければ対応可能であります。急患は随時受け付けいたしております。

主な胆膵領域の疾患について

膵臓の疾患

腫瘍

-膵臓癌 -膵神経内分泌腫瘍

膵嚢胞性腫瘍

-膵管内乳頭状粘液産生腫瘍(IPMN:Intraductal Papillary Mucinous Neoplasm) -粘液性嚢胞腫瘍(MCN:Mucinous Cystic Neoplasm) -漿液性嚢胞腫瘍(SCN:Serous Cystic Neoplasm) -Solid-Pseudopapillary Neoplazm(SPN) -単純性膵嚢胞

良性疾患

-急性膵炎、慢性膵炎 -自己免疫性膵炎

胆管の疾患

腫瘍

-遠位胆管癌、肝門部領域胆管癌 -十二指腸乳頭部腫瘍 -胆管内乳頭状腫瘍(IPNB:Intraductal papillary neoplasm of the bile duct)

良性疾患

-総胆管結石、急性胆管炎 -原発性硬化性胆管炎(PSC:Primary Sclerosing Cholangitis ) -IgG4関連硬化性胆管炎

胆のうの疾患

腫瘍

-胆のう癌

良性疾患

-胆のう結石 -胆のうポリープ -急性胆のう炎 -慢性胆のう炎、胆のう腺筋腫

当グループで実施している検査・治療

胆膵領域の適切な診断、また悪性疾患の早期診断・撲滅を最大の目標に掲げております。

胆膵領域の臓器の診断・治療におきましては、専門的な知識による診断・治療の戦略、またそれを支える手技および技術が必要となります。当グループでは、専門の施設で修練を積んだスタッフが診療にあたり、消化器外科、臨床腫瘍科、放射線科、緩和ケアと連携しながら最新の診断・治療を行うことを心掛けております。

CT検査

- 64列および80列のCT装置を有しており、マルチスライスCTでの詳細な画像診断が可能であります。ダイナミックCTはもちろんのこと、血管3Dなど特殊な撮影にも対応しております。最近導入したDual Energy CTは膵癌の早期診断に有用とされています。

MRI/MRCP(Magnetic Resonance Cholangiopancreatgraphy)検査

- 1.5T(テスラ)および3TのMRI装置を有しております。MRCP検査により、胆のう、胆管、膵管を同時に抽出することで、疾患の診断や早期発見に有用であることが報告されております。

PET-CT検査

- 核医学検査であるPET-CT装置を施設で有しております。悪性疾患の診断がついている場合、病気の拡がり(Staging)の診断に有用であります。

内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP:Endoscopic Retrograde cholangiopancreatography)

- 専用の内視鏡(側視鏡)を用いて、胆管や膵管のカテーテル造影検査を積極的に行っております。診断では、胆管腫瘍や膵腫瘍、胆管狭窄の精密検査など、治療では総胆管結石や閉塞性黄疸のステント治療など、県内でも最多数例の経験があります。

術後腸管に対する小腸鏡を用いたERCP

- 過去の手術により、通常の内視鏡では胆管まで到達できない症例に対して、小腸鏡を用いたERCPを積極的に行っております。県内でも最多数例の経験があります。

超音波内視鏡(EUS:Endoscopic Ultrasound)

- 先端に超音波端子となっている特殊な内視鏡を用いて、胆のう、胆管、膵臓の精密検査を行います。胆のうがんや膵臓癌の早期診断に有用な検査になります。CTやMRIで異常がないように見えても、EUSで初めて病気が見つかる場合があり、胆膵領域では必須の検査となっております。

超音波内視鏡下穿刺吸引術(EUS-FNA:EUS guided Fine Needle Aspiration)

- EUSを用いて、通常の内視鏡では採取できない腫瘍などの針生検を行うことができます。適応として、膵腫瘍、リンパ節腫大、消化管粘膜下腫瘍などが挙げられます。2010年に保険適応となった検査ですが、県内でも最多数例の経験があります。

超音波内視鏡を用いたドレナージ治療

- EUS-FNAの技術を応用したドレナージ治療が可能であります。適応として急性膵炎後の膵嚢胞や膵壊死(膵嚢胞ドレナージ)、通常のERCPが不能な閉塞性黄疸(胆道ドレナージ)や膵管閉塞(膵管ドレナージ)が挙げられます。2012年に保険適応となった検査ですが、県内でも最多数例の経験があります。

急性膵炎による腹腔内膿瘍の治療

超音波内視鏡下胆管十二指腸吻合術(EUS-CDS

超音波内視鏡下肝内胆管胃吻合術(EUS-HGS)

内視鏡的乳頭腫瘍切除術

- 十二指腸乳頭部に発生した腫瘍を内視鏡的に切除する治療です。乳頭部には胆管および膵管が開口しているため、偶発症に留意しなくてはいけません。切除に加えて胆管・膵管にステントを留置するなど、専門的な技術が必要となります。

経口胆道鏡・経口膵管鏡

- 側視鏡を通して、胆管および膵管の中に挿入することができる、専用の小型カメラを使用した検査を行っております。難治性の総胆管結石や膵石に対するEHL(電気水圧衝撃波胆管結石破砕装置)や、診断困難な胆管および膵管腫瘍の診断を積極的に行っております。

膵専門医がいる関連施設について

横浜市立大学 肝胆膵消化器病学教室 胆膵グループでは、胆膵領域の専門的な修練を積まれた医師が横浜市内、神奈川県内、南東京の病院にて多数活躍しております。

横浜市立大学附属病院への通院が困難な患者様におかれましては、通院しやすい病院をお選びいただき是非とも、ご相談ください。

横須賀市立うわまち病院(横須賀市立総合医療センター移転予定)

住所〒238-8567 神奈川県横須賀市上町 2-36 
電話(代表):046-823-2630
医師:細野 邦広 医師


横浜労災病院

住所:〒222-0036 神奈川県横浜市港北区小机町3211
電話(代表):045-474-8111
医師:関野 雄典 医師


横浜栄共済病院

住所:〒247-8581 横浜市栄区桂町132番地
電話(代表):045-891-2171
医師:岩崎 暁人 医師


NTT東日本関東病院

住所:〒141-8625 品川区東五反田5-9-22
電話(代表):03-3448-6111
医師:藤田 祐司 医師


けいゆう病院

住所:〒220-8521 神奈川県横浜市西区みなとみらい3-7-3
電話(代表):045-221-81881
医師:香川 幸一 医師


平塚市民病院

住所:〒254-0065 神奈川県平塚市南原1-19-1
電話(代表):0463-32-0015
医師:岩瀬 麻衣 医師


町田市民病院

住所:〒194-0023 町田市旭町2-15-41
電話(代表):042-772-2230
医師:谷田 恵美子 医師


茅ヶ崎市立病院

住所: 〒253-0042 神奈川県茅ヶ崎市本村5丁目15−1
電話(代表): 0467-52-1111
医師:佐藤 高光 医師

研究について

胆膵グループでは超音波内視鏡、ERCPをはじめとした胆膵内視鏡に関する臨床研究、また膵癌の早期診断、自己免疫性膵炎、神経内分泌腫瘍、乳頭部腫瘍について国内・世界においても最先端の診療・研究を行っています。また教室の関連施設や国内の専門施設とも多施設共同研究を行っています。

臨床研究

  • 神経内分泌腫瘍における免疫染色を用いた局所免疫機構解析
  • 慢性膵炎膵管ステントの長期成績と膵管鏡下膵石破砕に関する後ろ向き観察研究
  • 術前膵癌の適切な内視鏡的胆道ドレナージに関する観察研究
  • 術後腸管結石における胆管結石の小腸鏡ERCPとEUS-BD治療の比較
  • 胆管ステント留置後の非切除胆管癌患者を対象とした内視鏡的胆管ラジオ波焼灼術の安全性および有効性を検討する臨床研究
  • EST後出血のリスク因子解析に関する観察研究
  • 非切除遠位悪性胆道狭窄に対する胆管金属ステントに関する臨床研究
  • 肝門部領域胆管癌における最適な術前胆道ドレナージに関する観察研究
  • High risk stigmataを有するIPMNに関する観察研究
  • EUS-FNAを用いたRNAシークエンスを含めたがんゲノム解析に関する臨床研究
  • 肝外胆管癌の進展度診断における術前診断能に関する後ろ向き観察研究
  • 無症候性胆管結石に対する自然脱落型胆管ステントの有用性についての観察研究
  • IgG4-関連膵胆道疾患における悪性腫瘍との関連性および長期予後に関する多施設共同研究
  • AIP・IgG4-SCにおける各種生検の診断能
  • IgG4関連硬化性胆管炎臨床診断基準2020の検証
  • IgG4関連膵胆道疾患におけるEUS診断
  • IgG4-関連硬化性胆管炎合併自己免疫性膵炎におけるステロイド導入前胆道ドレナージの多施設共同研究
  • 膵神経内分泌腫瘍に対するエベロリムスの治療効果予測因子の検討
  • 膵神経内分泌腫瘍に対する画像検査による検出率(感度)の検討
  • 神経内分泌腫瘍に対するペプチド受容体放射性核種療法の治療効果とそれに関与する因子の研究
  • 十二指腸乳頭部腫瘍に対する内視鏡的切除の有効性と安全性、予後を検討する多機関共同観察研究
  • 十二指腸乳頭部腫瘍内視鏡的切除後の遺残例の予後の検討
  • 内視鏡的乳頭切除術(EP)を施行した乳頭部腫瘍に対する術前診断についての検討
  • CTで診断困難な総胆管結石に対するEUSと3.0-Tesla MRCPの診断能を検討する並行群間ランダム化比較試験
  • 経口胆道鏡/膵管鏡を用いた結石治療の有効性、安全性を検討する観察研究
  • 超音波内視鏡下穿刺吸引法の有用性、安全性を検討する観察研究
  • 消化管粘膜下腫瘍におけるEUS-FNAの診断能および病理診断可能率に寄与する因子に関する検討
  • 超音波内視鏡下胆道ドレナージの検討
  • ERCP施行時の十二指腸蠕動抑制効果に対するリドカイン塩酸塩ゼリー混和液散布の多施設共同ランダム化プラセボ対照比較試験
  • 乳酸リンゲル液による負荷輸液療法のERCP後膵炎予防効果の検討 並行群間ランダム化比較試験

基礎研究

  • 神経細胞受容体を介した膵癌増殖メカニズムの解析研究
  • 神経内分泌腫瘍オルガノイドマウスモデルの研究開発
2025年2月13日

消化管グループ

消化管グループ

当科消化管グループでは日本消化器病学会および日本消化器内視鏡学会により認定を受けた経験豊富な専門医・指導医を中心に診療、治療を行っております。

食道・胃・十二指腸・小腸・大腸といった食べ物の通り道(消化管)のあらゆる病気に対して診断・治療を行っております。

消化管腫瘍に対しては、最新の内視鏡を用いての診断・治療が可能です。小さな大腸ポリープ等の摘除から巨大な早期癌の内視鏡治療(ESDなど)まで数多くの内視鏡治療を行っております。残念ながら内視鏡治療適応外である進行癌の診断となった方は外科や臨床腫瘍科とも連携することによって、スムーズに手術や化学療法といった治療へ移行することも可能です。また、食道癌に対しては光線力学療法(PDT)を行うことができる全国的に見ても数少ない施設です。

近年、増多傾向が見られるCrohn病や潰瘍性大腸炎といった炎症性腸疾患に対しても幅広く診療を行っております。Crohn病など含めた小腸疾患に対しては、小腸内視鏡(カプセル内視鏡、バルーン内視鏡)も数多く行っております。

また、消化管領域の代表的な救急疾患である胃十二指腸潰瘍や食道静脈瘤や憩室等による消化管出血に対しては救急科、内視鏡センターと連携して24時間迅速な診療を行っております。

その他、他院で対応困難な難病も数多く診療しております。

消化管腫瘍

治療方法

内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)

早期消化管癌に対して行われる内視鏡治療の1つです。粘膜下層に生理食塩水・ヒアルロン酸等を注射し、癌を浮かせ、治療用の電気メスを使用し癌を一括切除するまでを、すべて内視鏡下で行う方法です。外科的な治療と比べ、低侵襲で身体的な負担が軽く、入院日数が少なく済むのが特徴です。大きな病変や複雑な形状であっても、より低侵襲に治療を行うことができます。

消化器内科外科合同手術(LECSなど)

内視鏡単独では治療が困難な粘膜下腫瘍や巨大な十二指腸癌に対して、外科と合同での手術を行います。外科単独の治療では、広い範囲の腸管を切除しなければならない腫瘍であっても、内視鏡を併用することによって、より狭い範囲・低侵襲な治療を可能にします。

当院でのPDT治療時の様子

腫瘍組織や腫瘍血管に集まる性質を持った光感受性物質を患者さんに投与し、光感受性物質が集まった箇所にレーザーを照射することによって、光化学反応を引き起こし、癌細胞を変性・壊死させる治療法です。当科では、主に放射線治療後の再発性食道癌に対して内視鏡を用いての治療を行っております。

中部食道のRT後の再発食道癌
PDT時
PDT1日後
PDT2週間後

当院では、高度な内視鏡技術を備えた専門の医師チームが、患者さま一人ひとりに最適な診断と治療を提供しています。

一般的な早期消化管癌に対する内視鏡治療はもちろんのこと、他院で治療困難と判断された病変に対しても積極的にESD等での治療を行っております。

早期咽頭癌についても、耳鼻科と合同手術(ESD)を多数行っており、また、光線力学療法(PDT)を行うことのできる全国的に見てもまれな病院です。

消化管腫瘍の治療に関するご質問やご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

炎症性腸疾患

疾患の概要

炎症性腸疾患(IBD)は、消化管に慢性的な炎症を引き起こす疾患で、代表的なものに潰瘍性大腸炎とクローン病があります。これらの疾患は若年層から中年層で発症することが多く、進行性や再発性を伴うため、継続的な診断と治療が必要です。近年では増多傾向にある難病です。当院では、最新の医療知識・技術を用いて、患者さま一人一人に適した診断と治療を行っています。

潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に炎症が生じ、潰瘍やびらんを形成する疾患です。大腸の内側から直腸にかけて広がることが多く、腹痛や下痢、血便といった症状が現れ、長期に活動性が持続すると大腸癌の発癌リスクが高くなるのが特徴です。症状が持続したり、再発を繰り返したりするため、継続的な治療と定期的な採血・画像検査による経過観察が重要です。

クローン病

クローン病は、口腔から肛門までの消化管全体に炎症を引き起こす可能性がある疾患で、小腸や大腸が主に影響を受けます。腹痛や下痢、体重減少、栄養障害が主な症状で、炎症が深部に及ぶことで瘻孔や狭窄といった合併症を引き起こすこともあります。クローン病も、再発しやすい疾患のため、長期的な治療と管理が不可欠です。

診断と治療

当院では、内視鏡検査や血液検査、画像診断などを組み合わせて、IBDの正確な診断を行っています。また、患者さまの症状や炎症の程度に応じて、薬物療法(抗炎症薬、免疫調整薬、生物学的製剤など)を中心に治療を進めます。炎症が強い場合には、外科的治療を検討することもありますが、可能な限り薬物療法による寛解維持を目指します。

当院での取り組み

炎症性腸疾患の内科的治療は、ベースとなる5ASA製剤から、中等症以上でのステロイド、近年では生物学的製剤、JAK阻害薬なども多数発売されその使い分けには専門的知識が欠かせません。また、時に小腸内視鏡などの専門性の高い内視鏡検査も必要となります。当院では、IBDに精通した医師が患者さまに寄り添い、病状やライフスタイルに応じた治療計画を立てています。

小腸内視鏡

当院では一般病院ではなかなか行うことができない小腸検査を行うことも可能です。小腸内視鏡は大きく以下の2つに大別されます。

検査方法

カプセル内視鏡

カメラが内蔵された小さなカプセルを服用することで小腸全体を撮影する検査法です。カプセルが消化管内を移動しながら多数の画像を撮影します。、身体に負担が少なく、痛みのない検査として選ばれることが多く、小腸出血や炎症、ポリープ、腫瘍などを検出することができます。

バルーン内視鏡

バルーン内視鏡は、特殊な構造を持つ内視鏡で、バルーンを膨らませることで小腸内を進み、病変部を直接観察する検査です。さらに、この内視鏡は治療も可能であり、必要に応じて組織を採取したり、ポリープを切除したりすることができます。カプセル内視鏡で異常が見つかった場合や、詳しい検査や治療が必要な場合に有効です。

バルーン内視鏡により、小腸の詳細な診断が可能になるため、診断の精度が向上します。また、小腸の病変が発見された場合に、同時に治療を行えるという利点もあります。

当院での取り組み

小腸は一般病院ではなかなか精査の行えない消化管ですが、当院では、小腸内視鏡検査に関して豊富な経験を持つ医師が、患者さまの状態に合わせた最適な検査法を選び、安心かつ的確な診断を行っています。小腸内視鏡検査についてご不明な点やご不安なことがございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

その他

胃十二指腸潰瘍管出血や腸閉塞、憩室炎などの一般的な疾患から、原因不明の消化管出血や腸炎、難治性便秘など、急性期から慢性期まで、様々な消化管の問題を幅広く受け入れ診療を行っております。他院でお困りの症例も積極的に受け入れております、どうぞお気軽にご相談ください。

研究について

当医局の消化管チームでは、消化器疾患の予防・診断・治療に関する最先端の研究を行っています。特に、内視鏡技術の進歩を活かした新たな診断・治療法の開発や、疾患のメカニズム解明を通じた革新的な治療戦略の確立を目指しています。

研究テーマ

1. 大腸癌の予防と腸内細菌

大腸癌予防の鍵となる化学予防と腸内細菌の関係に着目し、基礎研究と臨床研究を橋渡しする研究を進めています。将来的な予防戦略の確立を目指し、腸内細菌の変化が大腸癌発症に与える影響を解明します。基礎研究ではヒト由来オルガノイドを用いた実験を行っています。

2. 内視鏡的切除技術の革新

安全で効率的な大腸腺腫および十二指腸腫瘍の内視鏡的切除法の開発を行っています。低侵襲かつ確実な治療を提供するための新規手技を確立し、臨床応用を目指します。

3. 食道癌に対する光線力学療法の適応拡大

特定臨床研究として、食道癌に対する光線力学療法(PDT)の適応拡大を目指した臨床研究を実施。標準治療が困難な患者への新たな選択肢となる治療法の確立を目指しています。

4. 咽頭ESDの有効性と安全性の検証

咽頭領域における内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の効果と安全性を検証し、低侵襲治療の可能性を広げる研究を進めています。

5. 内視鏡医の健康を守る研究

内視鏡検査や治療に伴う筋骨格障害(MSDs)の発症メカニズムを解明し、予防法の開発を行っています。医師の健康を守ることで、より良い医療の提供を目指します。

6. 次世代内視鏡技術の開発

新規内視鏡技術を用いた診断法やデバイスの開発を進めています。AIや高度画像処理技術を取り入れ、より精度の高い診断を実現します。

7. 胆汁酸代謝と消化管運動

胆汁酸代謝が消化管運動に与える影響を研究し、慢性便秘症や機能性消化管疾患の新たな治療ターゲットを探索しています。

8. ポータブルエコーを用いた便秘診療の質の向上

ポータブルエコーを活用し、便秘診療の質を向上させるための研究を進めています。より迅速かつ正確な診断を可能にし、患者にとって負担の少ない新たな診療アプローチを確立することを目指しています。

9. ガイドラインの作成

薬剤性消化管障害および慢性便秘症に関する最新のエビデンスを基に、診療ガイドラインの作成に携わっています。エビデンスに基づいた医療の提供を支援することで、より質の高い診療を実現します。

消化管グループ大学院で学べること

  • 論文の読み方(最新のエビデンスを正しく理解する力)
  • 研究テーマの見つけ方(臨床疑問から研究へ)
  • 論文の書き方(世界に発信できる研究成果のまとめ方)

日々の診療の中で生まれる疑問を解決し、医学の発展に貢献する研究を一緒に行いませんか? 興味のある方は、ぜひお気軽にご相談ください!

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