MASLDにおける肝線維化進展リスクの個別予測モデルを開発 ― 11,000例超の国際共同研究成果がClinical and Molecular Hepatology誌に掲載 ―
米田正人主任教授が参画する国際共同研究グループ(VCTE-Prognosis Study Group)は、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)患者における肝線維化進展リスクの自然歴を解明し、個々の患者に応じた予後予測を可能とする新たなモデルを開発しました。本研究成果は、肝臓病学分野を代表する国際学術誌Clinical and Molecular Hepatology誌に掲載されました。
The Natural History and Individualized Prediction of Liver Stiffness-Based Fibrosis Risk in MASLD
Shi Y, Zhou R, Kim SU, Yip TC, Petta S, Bugianesi E, Yoneda M, Romero-Gomez M, Tsochatzis E, Newsome P, Hagström H, Goh GB, Chan WK, Calleja JL, Boursier J, Sanyal AJ, Fan JG, Castera L, de Ledinghen V, Lai M, Zhou XD, Wong VW, Zheng MH; VCTE-Prognosis Study Group.
Clin Mol Hepatol. 2026 May 20.
PMID: 42157483 doi: 10.3350/cmh.2026.0279. Online ahead of print.
MASLDは世界人口の約3人に1人が有するとされる最も頻度の高い慢性肝疾患ですが、その進行速度や肝関連イベントの発症リスクは患者ごとに大きく異なります。近年、FibroScanによる肝硬度測定(Liver Stiffness Measurement:LSM)がリスク評価に広く用いられていますが、従来は単一時点での評価が中心であり、時間と共に変化する病態を十分に反映できないという課題がありました。
本研究では、世界16施設から集積された11,514例のMASLD患者を対象に、複数回のFibroScanデータを用いて解析を実施しました。その結果、低リスク群の92%は1年後も低リスク状態を維持し、平均8.4年間安定して推移する一方、中間リスク群は1年後に39%しか同じ状態に留まらず、平均滞在期間も0.9年と極めて不安定であることが明らかとなりました。
さらに、2型糖尿病、高血圧、肥満が線維化進展を加速させる一方、糖尿病治療薬の使用はより良好な経過と関連することを示しました。これらの知見を基に、研究グループは年齢、性別、糖尿病、高血圧などの臨床情報と経時的なLSM変化を統合した動的予測モデル「DYNAMO(Dynamic Markov Model)」を開発しました。本モデルにより、将来の肝関連イベントや死亡リスク、さらには肝線維化ステージの変化を患者ごとに予測することが可能となり、より個別化された診療や適切なフォローアップ間隔の設定に役立つことが期待されます。
本研究は、MASLD診療において「現在の状態を評価する」だけでなく、「将来どのように変化するか」を予測する新たなアプローチを提示するものであり、今後のリスク層別化と個別化医療の発展に大きく貢献することが期待されます。
